「私はこういう人間だから」と言う人|自我に支配されたとき

the excessive need to be me
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「私はこういう人間だから」という言い訳で、自分の欠点を正当化するのは、改善の必要性を拒む厄介な癖です。

日常生活の些細な決断でも、仕事における重要な問題でも、私たちは自分のやり方で物事を進めたいという欲求があります。この「自分らしさ」にこだわる傾向、いわば「私であること」への過度な執着は、ポジティブな変化を阻む大きな障害となります。

主なアイデアの要約

  • 人間は、自分の核となると信じる特定の特性にしがみつく傾向がありますが、それが役立つ場合もある一方で、成長を妨げ、変化に対して抵抗する原因にもなります。例えば、議論を引き起こしたり、マイクロマネジメントに走ったり、防御的になったり、頑固になったりする行動が挙げられます。これらの有害な行動は、「私はこういう人間だから」といった言い訳で正当化されがちです。
  • 「自分らしさ」に固執することは、変化への恐れ、不安感、そして自己認識の欠如から生まれることが多いです。やがて、私たちは自分の有害な行動を「個性」の一部として認識するようになります。
  • この悪癖を克服するためには、自己認識を高め、変化を受け入れ、他者からのフィードバックを取り入れることが重要です。

「私はこういう人間だから」という言い訳とは?

人間には、自分の性格や行動の一部を「自分の本質」として固く守ろうとする傾向があります。こうした特性は、性格、幼少期の育成環境、過去の経験などが複合的に影響を与えています。それらの特性の中には、勤勉さ、正直さ、思いやりなど、確かにポジティブなものもありますが、一方で、マイクロマネジメントや怒り、柔軟性の欠如といったネガティブなものも存在します。

自己成長やキャリアアップを目指す上で、この「自分らしさ」に対するこだわりは、大きな障害となります。マーシャル・ゴールドスミス氏がベストセラー『What Got You Here Won’t Get You There(日本語:コーチングの神様が教える「できる人」の法則)』で指摘している通り、私たちは、変化が自分や周囲に利益をもたらすと知っていても、行動を変えることに抵抗を示してしまいます。

この抵抗を「私はこういう人間だから」という言い訳で正当化し、学びや成長の機会を逃してしまうのです。

「私はこういう人間だから」と言う人

自分はこういう人間だからと言う人

  • 自分が常に正しいと思い込む

「自分らしさ」に過度に固執する人は、しばしば絶え間ない口論に巻き込まれます。自分と異なる視点を受け入れられず、人間関係やチームの連携に悪影響を与え、新しいアイデアに触れる機会も失ってしまいます。

完璧さとコントロールへの執着から、他者に仕事を任せたり、独立性を尊重したりすることが難しくなります。彼らは、重要でない場面でも自分のアイデアを提案したがる傾向があります。その結果、創造性が抑えられ、チームの活力も低下します。

  • 防御的になる

「自分らしさ」に固執する多くの人は、建設的なフィードバックでさえも、個人的な攻撃として受け取りがちです。防御的な態度は、他人の話を聞くことや、自分のミスを認めること、改善点を見つけることを難しくします。その代わりに、「これは自分の独自の働き方だから」というような言い訳で、締め切りを守れないことなどを正当化しようとします。

  • 頑固である

多くの場合、私たちは特定の働き方に固執し、自分の視点や行動を適応させることに消極的です。例えば、マネージャーが、弱いとか不誠実だと思われることを恐れて、チームメンバーに前向きな評価を与えることを拒むことがあります。柔軟性を欠くことは、自己成長や人間関係の改善の機会を逃す原因となります。

「私はこうだから」という心理

  • 変化への恐怖

この悪癖の背後には、固定的な考え方が存在します。多くの人は、自分の特性が生まれつきであり、変えられないと信じています。そのため、違う行動を取ることは「自分らしくない」と感じます。表面的な「自分らしさ」にしがみつき、今の行動が長期的には有害であると分かっていても、それを改めようとしません(例えば、いつも遅刻することで、チームのパフォーマンスに悪影響を与えていることなど)。

  • 不安感

大きな自我は、内側の空虚さを隠すための盾にすぎない。

ダイアナ・ブラック

一部の人にとっては、問題は不安感に関係していることがあります。拒絶されることへの恐怖や、他者からの賞賛を求める欲求が、自己中心的な思考に結びつき、間違いを認めることに抵抗を感じます。

他人の評価を気にしすぎると、今までの自分を守るために、既存の行動に固執しがちになるのも無理はありません。

  • 認識不足やフィードバックの欠如

時には、自分の行動が他人に与える影響を認識していないことがあります。そのため、行動を変える必要性を感じないのです。

「私はこうだから」と言いすぎると何が起こるか?

エゴは常に現実を遠ざけ、空虚な期待で未来を作り、後悔の記憶で過去を構築する。

アラン・ワッツ

人は誰しも、自分のアイデンティティに深く根付いていると感じる行動パターンを持っています。それがたとえ他人に害を与えるものであっても、「自分の一部」だと定義してしまうのです。

たとえば、電話の返事をしないという行為を、自分が仕事に専念しているせいだと正当化し、「私はそういう人間だから」と言い訳します。違う行動をとることは、自分の本質を否定することだと感じるからです。

また、相手に対して破壊的なフィードバックを繰り返す場合でも、「私はただ正直に言っているだけだ」と言い訳します。自分の「正直さ」が他人に与える影響など気にしません。

こうして私たちは、時間が経つにつれて、自分の欠点を美徳と見なし、それをアイデンティティの一部としてしまうのです。

この「自己」に対する盲目的な忠誠心は、長期的な行動変容を妨げる最も強力な障害の一つです。

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自分はこういう人間だからと言う人

自分はこういう人間だからと言う人

「私はこういう人間だから」と言う人の例

『自分らしさ』に固執することは、実は『自分らしくない』という証だ。

マーシャル・ゴールドスミス

数年前、マーシャル・ゴールドスミス氏は、部下に対してポジティブな評価をすることに苦労している高位の役員とのコーチングセッションを行いました。そのやりとりは次の通りです。

「これは驚くべきことです。あなたは7つの重要な領域のうち、いくつかで非常に高い評価を受けていますが、一つの分野、つまりポジティブな評価を与えるという点では、誰もあなたが得意だとは思っていないようです。」

「それで、私にどうしろというのですか? 価値のない人を褒めて回れと?そんなことをしたら、嘘っぽく見えてしまいます。」

「それがあなたの言い訳ですか? 嘘っぽく見られたくないから?」

「そうです。」

その役員は、なぜポジティブな評価が低かったのか、いくつかの理由を挙げました。

  • 高い基準を持っており、人々がそれに見合うことは少ない。
  • 手当たり次第に褒めるのは、評価の価値を下げると思っている。
  • 一部の人を褒めると、チーム全体の士気が弱まると感じている。

このように、その役員は行動を正当化し続けましたが、ゴールドスミス氏はそこで彼を遮りました。

「どんなに言い訳をしても、私はあなたが賞賛すること自体に問題があるとは思いません。また、それが嘘っぽく見えるからという理由でもないでしょう。問題の本質は、あなた自身が定義する『自分らしさ』という制限にあります。あなたは、『自分らしくないこと=嘘っぽい』と定義してしまっているのです。褒め言葉を言う時、『これは自分らしくない』と感じてしまうのでしょう。

なぜそれが『あなた』になれないのでしょうか?それは不道徳なことですか?違法なことですか?」

「いいえ。」

「褒められることで、人々は気分が良くなりますか?」

「はい。」

「その結果、パフォーマンスが向上しますか?」

「たぶん。」

「それはあなたのキャリアに役立ちますか?」

「おそらく。」

「じゃあ、なぜやらないのですか?」

「だって、それは『私らしくない』から。😊😊😊」

その時、その役員は、問題の本質が彼自身の自己定義にあることに気づきました。「自分らしさ」に対する過度なこだわりが、チームの利益を無視し、自己中心的な考え方を生み出していたのです。

その後、彼はチームメンバーの才能や努力を認め、完璧ではない状況でも賞賛の言葉や励ましを送るようになりました。

成功の方程式は、少ない『私』+多い『私たち』だ。

マーシャル・ゴールドスミス

自分はこういう人間だからと言う人

「私はこういう人間だから」という言い訳をやめる方法

難しいと感じるかもしれませんが、人間関係の調和を保ち、自己理解を深めるためには、「自己」という概念に固執することを手放す必要があります。

  1. 自己認識を育む

知識が増えればエゴは小さくなる。知識が少なければエゴは大きくなる。

アルベルト・アインシュタイン

自己認識とは、自分の思考、感情、そして行動を深く理解することです。内面の世界に敏感になることで、自分のエゴを駆動させている信念をよりよく理解できるようになります。

ほとんどの場合、私たちが自分自身や他人について抱いている思い込みは、過去の経験や育ち、文化的な影響によって形作られたものであり、必ずしも正確ではありません。自分の行動が必ずしも自分の本質を定義するわけではないことを理解することが、変化の可能性を受け入れるために重要です。

自己認識を高めるためには、マインドフルネスの実践が欠かせません。日々の瞑想や自問自答、自己反省などは、私たちが思考や行動を明確に観察し、エゴに支配されそうになった時にそれに気づく助けとなります。

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  1. 変化を受け入れる

エゴにとって悪い日は、魂にとって良い日である。

ジリアン・マイケルズ

不確実性への恐怖が、「自分らしさ」に固執する理由を強化することが多いですが、変化は成長のために自然で避けられないものです。

行動を変えることは、アイデンティティや自分の本質を妥協することではありません。実際、柔軟性は個性と共存できるものです。考え方を常にリフレーミングすることで、変化を受け入れることがより容易になります。

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  1. フィードバックを求め、他者から学ぶ

誰かがあなたを正そうとして、あなたが気分を害するなら、それはエゴの問題だ。

ヌーマン・アリ・カーン

周囲からのフィードバックは、自分の行動がどのように他人に影響を与えているかについての貴重な洞察を提供します。場合によっては、コーチやメンター、カウンセラーやセラピストなど、経験豊富な人に助けを求めるのもよいでしょう。こうした専門家との対話を通じて、自分の行動上の欠点や、前向きな変化のための戦略に光を当てることができます。

自分はこういう人間だからと言う人

自分はこういう人間だからと言う人

まとめ

「自分らしさ」に対する過度な執着は、成長への旅における強力な障害となります。「私はこういう人だから」という自己限定的な定義にしがみついて言い訳をすることで、新しい状況に適応し、より良い人間関係を築くチャンスを否定してしまうのです。人生でより大きな成功を目指す人にとって、「私」ではなく「私たち」に焦点を移し、自分の行動が他者にどのような影響を与えるかを考えることが重要です。

有名なエグゼクティブコーチ、マーシャル・ゴールドスミス博士が書いたベストセラー『What Got You Here Won’t Get You There』からインスピレーションを得て編集

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