私たちは誰しも、あまり良くない性質や習慣を持っています。それらの中には、放置すると長期的に非常に有害となるものもあります。本記事では、『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』(原題:What got you here won’t get you there)の著者であるマーシャル・ゴールドスミス博士が挙げた、人生における「成功を妨げる20の悪い癖」をご紹介します。
悪い癖をやめることの価値
「行動は言葉よりも雄弁である」という言葉があります。知識や経験が成功の一部を手助けすることはあっても、最終的に成功を持続し、さらに大きな成功をつかむかどうかを決めるのは「行動」です。
私たちはしばしば、決断力や柔軟性などの良い特性を身につける必要性を語りますが、悪い癖をやめる重要性を見落としがちです。これらの悪い癖は日常生活に深く根付いており、進歩を妨げ、人間関係を損ない、生産性を低下させ、可能性を制限する「見えない壁」となっています。
これらの癖を断ち切るのは簡単ではありませんが、克服することで、長期的なポジティブな変化への道が開けます。新しいスキルを習得する必要はありません。ただ「やめる」だけで良いのです。
たとえば、誰かのアイデアに対して皮肉を言う癖がある場合、ただ黙っていれば良いのです。無理に褒める必要はありません。ただ静かにするだけで十分です。
また、上から目線で何でも知っているように振る舞う癖がある場合、誰かが役立つ提案をしてくれたときに、口を閉じておくよう心がけましょう。そして、もし「ありがとう」と一言添えることができれば、それはさらに素晴らしいことです。
成功を妨げる20の悪い癖
ゴールドスミス博士は著書の中で、20の悪い癖がいかにしてプロとしての成長を妨げるかについて詳しく述べています。これらのネガティブな行動は、放置すれば人間関係、生産性、さらには成功そのものに深刻な影響を及ぼしかねません。
極度の負けず嫌い
何が何でも勝ちたい、常に正しいと思われたい、どんな状況でも優位に立ちたい――このような「極度の負けず嫌い」は、多くの成功者に共通する特徴です。しかし、必要以上に競争心を抱くことは、人間関係を損ない、最終的には自分の成長を妨げる要因となります。この癖こそが、他の多くの悪い癖の出発点です。
他人との良好な関係を築くよりも、自分の意見を証明することに執着する傾向があります。どんな場面でも競争として捉え、常に他者より優れていることを求めます。その結果、情報を共有することに抵抗を感じ、時には隠してしまうこともあります。
また、自分のミスを認めることに対して極度の抵抗感を抱き、まるで大きな敗北であるかのように感じてしまうこともあります。競争心は時として有益ですが、どんな状況でも勝つことを優先する姿勢は緊張を生み、人間関係を破壊し、最終的にはプロとしての成長を妨げます。積極性と協調性のバランスを取り、正しさを証明するよりも、関係を大切にすることが時には重要であると認識することが必要です。
何かひとこと価値をつけ加えようとする
誰かが素晴らしいアイデアを提案したとき、こんな経験はありませんか?
「それ、いいアイデアですね。でも、こうした方がもっと良いと思います。」
これは、自分の意見を押し付けることで他人の貢献や努力を覆い隠してしまう、典型的な例です。この癖は「勝つために何としてでも」という心理の副産物であり、本人は善意のつもりでも、他人には不必要な干渉として受け取られます。
他人の仕事に余計な価値を加えようとすると、相手に「自分には能力がない」と感じさせるだけでなく、創造性を抑え、不必要な緊張を生み出します。結果として、良い意図にもかかわらず、関係性やチームダイナミクスを壊すことになります。
善し悪しの判断を下す
議論の中で自分の考えを表明するのは構いませんが、自分について意見やフィードバックを求める場面では、他人の判断をすることは全く適切ではありません。
他人を評価することは、相手に不快感を与え、距離を置かれる原因になります。それによって、いざという時にサポートを得られない状況に陥る可能性もあります。
人それぞれ、独自の視点や経験があります。それを評価することは非生産的で、全く意味がありません。相手の違いや欠点に執着するのではなく、判断を控え、積極的に傾聴し、他人の意見に感謝の意を示すことが推奨されます。
人を傷つける破壊的なコメントをする
皮肉を「防衛手段」として使う人を見たことがありますか?このような人は、ユーモアで自分の不安を隠したり、対立を避けようとしたりしますが、その代償として他人の感情を傷つけることになります。
時には、自分でも気づかないうちに破壊的なコメントをしてしまうことがあります。たとえば、会議中に軽率な「冗談」を言ったり、誰かの外見について不必要なコメントをしたり、過去の出来事を持ち出して配偶者を批判したりする場合です。
このような言葉は、後でどれだけ謝罪しても、相手の記憶から消えることはありません。
「率直」や「正直」であることを自負する人ほど、このような癖に陥りがちです。しかし、たとえ「真実」であっても、相手に悪影響を及ぼすなら、その「正直さ」に価値はありません。
相手との関係を改善したいのであれば、「本当にそれを言う価値があるのか?」と自分に問いかけるべきです。皮肉やネガティブなコメントではなく、建設的かつ敬意を持った方法で自己表現をする方が賢明です。
「いや」「しかし」「でも」で文章を始める
「いや」「しかし」「でも」といった否定的な言葉を、自分がどれほど頻繁に使っているか考えたことがありますか?試しに1日、自分の会話を録音してみてください。その頻度に驚くはずです。
たとえ友好的に見えたり、相手の気持ちを理解しようとしているとしても、こうした否定的な言葉が伝えるメッセージは同じです。「あなたは間違っている」と。
一見些細な言葉ですが、「いや」「しかし」「でも」はコミュニケーションに何の利益ももたらしません。それどころか、会話を中断させ、無意味な議論を引き起こし、建設的な話し合いを妨げます。
20の悪い癖
自分がいかに賢いかを話す
人は誰しも承認欲求を持っていますが、その欲求が原因で、さりげなく自分の賢さをアピールしてしまうことがあります。たとえば、誰かが何かを教えてくれた時、ついこんなふうに答えてしまうことはありませんか?
「それ、もう知ってたよ!」
本人には悪気がない場合がほとんどですが、こうした返答は相手に不快感を与えてしまいます。それはまるで、「僕の方が賢いんだから、君が言うことなんて無駄だ」と言っているようなものです。その結果、次回からは相手がサポートしてくれなくなるかもしれません。
もし誰かが手助けをしてくれたなら、その努力を否定せず感謝の気持ちを伝えましょう。たとえその結果が大きな成功につながらなくても、正しい返答は「ありがとう!」だけです。
腹を立てている時に話す
職場で頻繁に怒る上司がいる、という話をよく耳にします。彼らは感情的な爆発を「管理ツール」として正当化し、職場の倫理や成果を確保する手段と捉えているようです。
確かに、一時的には感情の爆発で人々を目覚めさせることができるかもしれません。しかし、長期的にはその方法は害を及ぼします。
怒りに支配されると冷静さを保つのは非常に難しくなり、冷静さがなければ正しい判断を下すことはできません。そして、頻繁に怒りを爆発させる人に対して、周囲はどんな印象を抱くでしょうか?
怒りは一時的な従属を生むかもしれませんが、最終的には反発心を引き起こし、周囲の人々を遠ざける結果になります。
怒りが込み上げてきた時こそ、一度立ち止まりましょう。そして、冷静になった後で問題に向き合い、尊重を持って話し合うことが大切です。
否定、もしくは「うまくいくわけないよ。その理由はね…」と言う
新しいアイデアが出された時、いつも否定的な反応をする人がいます。彼らは建設的なことを話したり考えたりすることができず、代わりに「そのアイデアは無理だと思う。その理由は…」や「面白いけど、唯一の問題点は…」というような否定的な意見ばかり述べます。
こういった態度の人と働くのは楽しくありません。否定的な視点は、他人の情熱や創造性を奪ってしまいます。また、リーダーとしてこのような態度を取ると、チームメンバーはリスクを取ることを恐れるようになり、萎縮してしまいます。
情報を教えない
情報を教えない、いわゆる「情報の隠匿」も、よくある悪い習慣の一つです。これは、他者をライバル視する「弱肉強食」のメンタリティが原因となる場合が多いですが、実際には、何の得もありません。
情報を独り占めすることで力を得られると信じている人もいますが、現実には、「信頼できない人」「操作的な人」と見なされるだけです。
真の力を得るのに必要なのは恐怖ではなく、信頼と忠誠心です。
さらに、多くの場合、情報を共有しない理由は悪意ではなく、無知や忙しさから来ています。以下のような状況が挙げられます:
- 忙しすぎて重要な情報を共有する時間がない
- チームメンバーを重要な会議に招待し忘れる
- タスクを委任する際、適切な指示を与えない
- など
意図がなかったとしても、情報を十分に共有しないことで、相手を不快にさせてしまうのです。
きちんと他人を認めない
他人の努力をきちんと認めないことは、不公平であるだけでなく、相手が受けるべき感情的な報酬を奪う行為でもあります。努力や成果が認められないと、相手のモチベーションは下がり、次回も全力を尽くす意欲を失ってしまいます。
他人の貢献を認めることは非常に重要です。それは「ありがとう」と言うようなシンプルなものであっても構いません。正しい認識は、士気を高め、人間関係を育み、より良い環境を作るための基盤となります。
20の悪い癖
他人の手柄を横取りする
他人の功績を自分のものにする行為は、「勝つためなら何でもする」という欲望の一形態といえます。
チームの成功において、誰が認められるべきかを判断するのは難しい場合が多いです。そして、自分が功績を奪うか、他人に譲るかの選択に直面した際、多くの人は後者ではなく前者を選びがちです。
しかし、個人が自己中心的で「自分の価値を証明する」ことばかりに囚われていては、チームがうまく機能するわけがありません。
この悪習を克服するためには、「功績の共有文化」を育むことが大切だと、ゴールドスミス博士は指摘しています。そのプロセスで重要なのは「自己省察」です。例えば、自分が成し遂げたことをリスト化し、次の質問を自分に投げかけてみてください。
- 「これは本当に私の功績なのか、それとも他の誰かが評価されるべきなのではないか?」
- 「このアイデアは私自身のものなのか?それともチームメンバーの鋭いコメントに触発されたものなのか?」
功績を分かち合うことで、チーム全体の絆が深まり、より良い成果を生み出せるのです。
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言い訳をする
「申し訳ないけど…」といった言葉が口癖になっているなら、一度立ち止まって考えるべき時です。
外的要因に責任を転嫁すること(例:交通渋滞のせいで遅刻した)は、集団にとって何の利益にもなりません。ただ自分の行動に責任を負い、そこから学ぶ機会を奪っているだけです。
交通渋滞が原因だったとしても、次回も同じ状況が起きた場合、また同じ言い訳をして人を待たせますか?
15分早く出発していたらどうなっていたでしょう?
多くの場合、私たちは自分の悪い習慣を「変えられない自分の性格」として片付けてしまいます。
- 「私は短気だから」
- 「いつも締め切り直前まで放置してしまう」
- 「せっかちなのは生まれつきだ」
こうした自己制限的な信念は、長年繰り返してきたパターンに起因することが多く、子供時代にまでさかのぼることもあります。そして、それが心に深く刻まれることで、「自分には無理」「できない」といった低い自己期待を抱くようになるのです。
しかし、こんな問いを自分に投げかけてみてはどうでしょう。「本当にそうなのか?」
言い訳をやめ、人生を自らコントロールする時が来たのです!
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過去にしがみつく
私たちはさまざまな理由で、過去に執着してしまうことがあります。特に、それによって自分の悪習を他者のせいにできる場合です。しかし、これを続けていると、知らぬ間に自己成長のチャンスを台無しにしてしまいます。
自分の過ちをコントロール不可能な外的要因のせいにすることで、失敗の責任を回避しようとしているのです。
もちろん、自己認識を深めたり学んだりするために過去を振り返るのは大切です。しかし、未来を変えるためでないのなら、過去を掘り返すことに意味はありません。
過去をやり直すことは誰にもできません。私たちにできるのは、受け入れ、学び、前進することだけです。以前の成功や失敗にしがみついていると、新たなチャンスをつかむ力が失われてしまいます。
夢に浸って現実を生きることを忘れてはならない。
J・K・ローリング
えこひいきをする
私たちは、個人的なつながりや友情、似たようなバックグラウンドを持つ人を好む傾向があります。しかし、こうした行動はチームの成長にとって非常に有害です。一部の人を優遇することで、やがて不満や分裂が生まれるのです。
リーダーとして、判断はパフォーマンスに基づいて行うべきです。賞賛を浴びせてくれる人をえこひいきするのではなく、実力を重視しなければなりません。そうしないと、人を犬のように扱うことになり、長期的には持続しないおべっか文化が生まれてしまいます。
すまなかったという気持ちを表さない
自分の過ちに対して謝罪しないことは、人間関係を壊し、余計な摩擦を生む原因となります。多くの場合、謝罪をためらうのは「負けたくない」「コントロールを失いたくない」という恐怖が原因です。皮肉なことに、シンプルな「ごめんなさい」でその恐怖は解消されます。
「ごめんなさい」と言う勇気を振り絞ることで、相手は敵ではなく味方に変わります。
古いことわざに「自分の行いが将来自分に跳ね返る」とあります。
- 他人に笑顔を向ければ、笑顔が返ってくる。
- 無視すれば、反感を買う。
- 自分の行動に責任を持ち、誠実に謝罪すれば、人間関係に前向きな変化をもたらすことができます。
友達を作りたいなら、相手に恩を感じさせることだ。
ベンジャミン・フランクリン
20の悪い癖
人の話を聞かない
マーシャル・ゴールドスミス博士が指摘するように、他人の話を聞かない態度は、さまざまなネガティブなメッセージを無意識に発していることになります。例えば:
- 「あなたのことはどうでもいい」
- 「あなたの言っていることを理解していない」
- 「あなたが間違っている」
- 「あなたは頭が悪い」
- 「あなたは私の時間を無駄にしている」
- などです
他人の無礼な行為には寛容になれることもありますが、「話を聞かない」という態度は、なかなか許せないものです。なぜなら、他人の話を聞くという行為には、特別なスキルや労力が必要ではないからです。それにもかかわらず、多くの人がこの悪習に陥ってしまいます。
自分の議題に固執しすぎるあまり、相手を尊重し、話に耳を傾ける余裕を失ってしまうのです。
感謝の気持ちを表さない
謝罪と同じように、「ありがとう」と感謝を伝えることは、人間関係において非常に効果的な行為です。それは、何を言ったらよいかわからないときの万能な一言であり、聞く人の心を必ず明るくします。
しかし、そのシンプルさにもかかわらず、感謝の意を示すことに苦労する人が多いのが現実です。実際に、「ありがとう」と言うべき明白な場面でも、言葉を飲み込んでしまうことがしばしばあります。
助言や褒め言葉、アドバイスを受けたとき、私たちはしばしばどう反応すべきか迷ってしまいます。そして、反論したり、疑問を呈したり、修正を加えたり、批評したりと、感謝以外の反応を選んでしまいがちです。
しかし、誰かが何かを提案してくれたり褒めてくれたりしたとき、私たちは必ず何かを得ることができます。そのため、勝ち負けにこだわる心を手放し、素直に感謝の気持ちを表すことが大切です。
八つ当たりする
私たちはしばしば、悪い知らせを伝えてきた人に怒りをぶつけることがあります。たとえその人が状況をコントロールできなかったとしても、問題に直面する代わりに、「伝えた人」を責めてしまうのです。このような反応は恐怖の雰囲気を生み出し、周囲の人が今後、私たちに連絡したり助けたりすることを躊躇する原因になります。
たとえば、部下が契約失敗の報告をした際に、上司が冷静に「何が起こったのか」と尋ねれば、何の問題も起きなかったはずです。しかし、感情的になって怒りを露わにすることで、部下は自分が責任を感じ、次から悪いニュースを共有することをためらうようになります。
他人の助けに対して怒りや困惑で応じるのではなく、「ありがとう」と言うだけで状況は大きく改善されます。
責任回避する
責任転嫁は、他人の功績を奪い、自分の失敗を押し付ける行為の一つです。本来、自分のミスを認めるべきと心の中では分かっていながら、それを避け、他人に責任を負わせてしまうのです。
誰も完璧ではありませんし、完璧であることを求められているわけでもありません。ただ、失敗したときには、その責任を取る姿勢が求められるのです。
実際、ミスは自分の人間性を示すチャンスと捉えるべきです。人々が感謝するのは、成功そのものではなく、失敗をどう受け止め、それをどのように修正したかという姿勢なのです。失敗から学び、成長しようとする意志こそが、誠実さや謙虚さ、そして成長へのコミットメントを示します。
「私はこうなんだ」と言い過ぎる
私たちは、自分の行動や性格を「自分らしさ」として受け入れる傾向があります。ポジティブなものもあれば、ネガティブなものも含まれますが、それを変えられない「自分の本質」だと信じてしまうのです。
たとえば、どんなに傷つける発言であっても「正直に話しているだけだ」と主張したりすることがあります。このように、自分の欠点を「自分らしさ」にすり替えることで、自分の短所に気づかなくなるのです。
しかし、私たちはその「信念」に縛られる必要はありません。人はいつでも変われるのです。
誰もが宇宙の中心ではありません。どんな状況においても、自分の言動が他人にどのような影響を与えるかを考慮することが重要です。
マーシャル・ゴールドスミスが20の悪い癖について語るビデオ
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