セルフコーチング|自分の人生を導く「内なるコーチ」の育て方

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行き詰まりを感じて、「誰か賢い友人やコーチメンターがそばにいてくれたら…」
そんなふうに思ったことはありますか?

多くの人は、迷いや不確実さに直面すると、外側に「答え」を求めます。
たしかに、他者からの助言はとても貴重なものです。
けれど実は、成長にとってもっとも身近で、もっとも強力な存在は――
あなた自身です。

つまり、あなたは「自分のコーチ」になることができるのです。

「自分をコーチするなんて…ちょっと変じゃない?」
そう思うかもしれません。でも心配はいりません。
セルフコーチングは世界中で実践されている、有効で、柔らかな自己探求のアプローチです。

これは、脳を「ハック」したり、無理に変わろうとするものではありません。
自分を理解するために、自分の声を丁寧に聞き、その理解から前に進む道を見つけていくこと。
そのための実践です。

主なポイント

  • セルフコーチング(英語:self-coaching)とは、自分自身にコーチングの原則を適用するプロセス。
    自分を「直す」ことが目的ではなく、自己理解を深め、制限となる思い込みを優しく手放し、価値観に沿った行動へ導く。
  • C-T-F-A-R モデルは、心の仕組みを理解するためのシンプルで効果的なツール。
    状況(Circumstance)→思考(Thought)→感情(Feeling)→行動(Action)→結果(Result)という流れで私たちの経験は形成される。
  • 環境をいつも変えられるわけではないが、「自分の物語(解釈)」は選び直すことができる。
    もう少し優しく、もう少し力を与えてくれる思考を選ぶことで、感情・行動・結果が自然と変化していく。
  • セルフコーチングには、構造化されたジャーナリング、視点を広げる質問、マインドフルネスなどの実践が含まれる。
    これらは「反応する前に一度立ち止まる力」を育てる。

セルフコーチングとは?

セルフコーチングとは、好奇心と思いやりを自分に向ける練習です。
なぜ今こんな気持ちなのか、どんな思い込みが自分の世界を形づくっているのか――。
その背景を理解するための静かな対話の時間とも言えます。

ただ日記を書くのとは違い、セルフコーチングは**能動的に聴く**プロセスです。
今いる場所と、心の奥で「本当はここに行きたい」と感じている場所の間に橋をかけるための実践でもあります。

セルフコーチングでは、あなたは同時に2つの役割を担います。

  • ジャッジせずに耳を傾ける、好奇心に満ちたコーチ。
  • 誠実に自分を見つめ、ありのままを語るクライアント。

この2つの視点をいったりきたりしながら、内側にある答えを少しずつ掘り起こしていきます。

セルフコーチングは本当に可能なのか?

ここで、多くの人が抱く疑問があります。

「自分のことを、自分で客観的に見られるのだろうか?」

答えは、「はい、可能です」。
ただし、ここでいう「客観性」とは、完全に感情を排した「分析者の視点」を意味していません。

目指すのは、完璧な客観性ではなく、**気づき**です。

冷静な観察者になる必要はありません。
必要なのは、やさしい見守り手になること。

セルフコーチングは、生まれつきの才能ではなく、習得できるスキルです。
その鍵は、感情が湧いたときに反射的に動くのではなく、**「ほんの少しだけ間を置く」**こと。

その瞬間に、こんな質問を自分に投げかける余白が生まれます。

  • 今、どんな物語を自分に語っている?
  • それは本当に事実?
  • もし別の解釈を選ぶとしたら?

もちろん、自分では見えない盲点は誰にでもあります。
だからこそ、コミュニティや専門のコーチが役に立つのです。

それでもセルフコーチングは、自分の中心に戻る力を育て、自立した在り方を育むとても強力な実践です。

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セルフコーチングを行う理由

セルフコーチングは仕事の場面でも役立ちますが、その真価はむしろ**「個人的な成長」**にあります。
自分らしく生きるための、土台となる力を育てる実践なのです。

  • 制限となる思い込みを手放せるようになる

私たちは誰しも、過去の経験から生まれた思い込みを心の中で繰り返し語っています。
「私は十分じゃない」
「私はクリエイティブじゃない」
「私は愛されないタイプだ」
…こうした言葉は、事実ではなく、単なるストーリーにすぎません。

セルフコーチングでは、それらの思い込みを光の下にそっと置き、やさしく観察し、問い直し、「事実」と「物語」を区別していきます。

例:
「私はいつも大事なことを先延ばしにしてしまう」という思い込みがあるとします。
セルフコーチングを学ぶと、「先延ばしにつながる思考は何だろう?完璧にやらなきゃと思っているのかな?」
と、自分に好奇心を向けられるようになります。

思考をとらえ直す力は、柔軟性や成長マインドセットを育む上で非常に重要です。
心理学誌『Frontiers in Psychology』に掲載された研究でも、セルフコーチングは先延ばしを減らし、目標達成率を高めると示されています。
内的ストーリーを手放すことで、新しい自分へと開く余白が生まれるのです。

自分の感情を丁寧に観察し、批判ではなく理解で応えるたびに、内なる自分へ「ここは安全だよ」と伝えています。
これが自己信頼の基盤になります。

例:
パーティーの前に強い不安が襲ってきたとします。
「私は本当に社交が苦手だ」と責めたり、無理やり行こうとする(=自分を見捨てる)代わりに、こう考える余裕を持てるようになります。

「不安を感じてるんだね。それは悪いことじゃない。
まずは、1%安心できる方法を探そう。1時間だけ行ってみるのはどうだろう?」

こうしたやり取りの積み重ねが、**自分のニーズに責任を持てる「内的リーダー」**を育てます。

  • 内なる知恵と再びつながれる

セルフコーチングは、外の雑音と自分の本心を分ける力を育てます。
「誰かに答えをもらう」から、**「自分の中にすでにある答えを聞きにいく」**へと変わるのです。

これはEQ(感情知性)の中心でもあり、自分の考えを俯瞰し、本音を見極める力(メタ認知)を強めるプロセスです。

例:
転職を考えているとき。
世間の雑音は言います。
「肩書きの良い方にしなよ」
「収入が高いほうがいいに決まってる」
でもセルフコーチングをすると、
「私は何を大切にしたい?」
「平穏に近いのはどっち?」
と、内側の声を聞けるようになります。

  • 心の平穏を生み出す

私たちが苦しむ理由の多くは、現実そのものではなく、**現実に対して心が作り上げたストーリー**にあります。

セルフコーチングは、事実と解釈を区別する習慣を育て、その余計なストーリーを静かに手放す助けになります。

例:
渋滞に巻き込まれたとき。
事実:
「車が進んでいない」
物語:
「最悪だ!今日はもう台無しだ!私はいつも運が悪い!」
苦しみを作っているのは後者の「物語」です。
物語を手放すだけで、同じ車内でも心は驚くほど静かになります。

関連投稿:ライフマネジメント(人生管理)|自分らしい人生をデザインするために

セルフコーチング を行う理由

セルフコーチング

セルフコーチングモデル|CTFARフレームワーク

私たちの経験を紐解くために使えるのが、セルフコーチングの世界で広く知られる CTFARモデル です。
コーチ Brooke Castillo によって体系化されたこのモデルは、あらゆる出来事が次の5段階で構成されていると説明します。

  • (C) Circumstance:状況(中立的な事実)

判断の入らない、誰が見ても同じと言える事実。
例:「パートナーが強めの口調を使った」

  • (T) Thought:思考(自分の解釈・物語)

事実をどう意味づけたか。
例:「私は大切に扱われていない」

思考から直接生まれる感情。
例:傷つく、怒り

  • (A) Action:行動

感情によって引き起こされる行動(または行動しないこと)。
例:「黙り込み、皮肉で返す」

  • (R) Result:結果

その行動が生み出す最終的な結果。
多くの場合、最初の思考を証明するように見えてしまう。
例:「ケンカが起きて、ますます尊重されていないと感じる」

セルフコーチング モデル CTFARフレームワーク

自分をコーチするモデル

● 実例:昇進に落ちたときの CTFAR

(C) 状況(事実)
応募した昇進を同僚が獲得した。

(T) 思考(物語)
「私は評価されていない。これからも前に進めない。」

(F) 感情
落胆、憤り、無価値感。

(A) 行動
会議で発言しなくなる、マネージャーを避ける、仕事に消極的になる。

(R) 結果
より価値がないように振る舞ってしまい、「私は評価されていない」という最初の思考が証明されたように見える。

見えてきますね。
**結果をつくっているのは、状況そのものではなく、状況に対する思考**なのです。
だからこそ、セルフコーチングは「思考に光を当てる」ことを重視します。

関連投稿:引き寄せの法則|人生の豊かさと成功を実現するためのヒント

CTFARモデルを使ったセルフコーチングの進め方

では、先ほどの例—「(C)同僚が昇進した」—を使って、CTFARモデルの具体的な使い方を見ていきましょう。

  1. 事実とストーリーを切り離す(C と T を分ける)

多くの苦しみは、事実ではなく「自分が作り上げたストーリー」を事実だと信じ込むところから生まれます。
そのため、最初にするべきことは 事実とストーリーをはっきり分けること です。

やり方:
紙を1枚用意し、左右に線を引きます。

  • 左:「事実」— 客観的に証明できる1文だけを書く
    例:「Xさんが新しい役職に任命された」
  • 右:「ストーリー」— その出来事について自分が抱いている解釈を書く
    例:「不公平だ」「私の努力は誰にも見えていない」「もう昇進できない」「やっぱり私は能力が足りない」

この「切り離す」という作業だけでも、心のスペースが生まれ、驚くほど気持ちが軽くなります。

  1. 自分のパターンをたどる(T → F → A → R)

変化を起こすには、まず「いま何が起きているか」を知ることが必要です。
自分のストーリーを冷静に見て、その流れを丁寧にたどっていきましょう。

例:

  • Thought(思考):「私は十分じゃない」
  • Feeling(感情):恥、悲しみ、無力感
  • Action(行動):人を避ける/気持ちを麻痺させるために動画を見続ける/転職活動に手をつけない
  • Result(結果):行動できないまま停滞し、「私はやっぱりダメだ」というストーリーを改めて証明してしまう

この段階では、評価したり否定したりする必要はありません。
ただ観察するだけで十分です。

反省

自分をコーチする方法

  1. 新しい、より力が湧く思考を選ぶ(T を書き換える)

ここがセルフコーチングの核心です。
事実(C)は変えられませんが、思考(T)はいつでも選び直すことができます

ただし、無理にポジティブになろうとする必要はありません。
重要なのは、自分自身が「これは本当にしっくりくる」と感じられる思考を選ぶことです。

例:

  • 旧ストーリー:「これは、私が不十分だという証拠だ」
    → 力を奪う思考
  • 新ストーリー:「ここから何が学べるのだろう?」
  • 中立のストーリー:「今回は他の人が選ばれた。私はがっかりしている。でも、この先の行動は自分で決められる。」

適度にニュートラルで、自分の行動を前に進めてくれる思考が理想的です。

  1. 新しいストーリーを生きる(T → F → A → R を再構築する)

新しい思考が生まれると、自然と感情・行動・結果も変わっていきます。

新しい T:「具体的なフィードバックをもらい、本当に望む方向に行動を整えるチャンスだ。」
新しい F:興味、落ち着き、前向きさ(あるいは、少なくとも以前より穏やか)
新しい A:

  • 落ち込んだ気持ちに少し寄り添う
  • この仕事が、自分にとって本当に重要かを書き出す
  • 同僚にお祝いを伝える
  • マネージャーに穏やかにフィードバックを求める
  • 自分のキャリアの優先順位を再確認する

新しい R:
進むべき方向が見えてくる。
「恐れ」ではなく「価値観」から行動したことで、内側に落ち着きと芯が生まれる。

セルフコーチング の進め方

セルフコーチング

セルフコーチング・ツールキット|テクニック&リソース

ここでは、日常で使える実践的なツールをご紹介します。
これらを少しずつ取り入れることで、自分自身を理解する力が安定して育っていきます。

  1. 構造化ジャーナリング

頭の中でグルグルしている思考を、紙の上に取り出して見える化するための最も強力な方法です。

やり方:
強い感情が湧いたら、C/T/F/A/R の5つの欄をつくり、まずは「いまの自動的なサイクル」を書き出します。

その後、別ページで「新しい T-F-A-R」を意識的に組み立ててみましょう。

  1. 思考を開く質問

質問はセルフコーチングのエンジンです。
答えを「探す」というより、「視野を広げる」ためのツールだと考えてください。

例:

  • 「いま、私はどんなストーリーを語っているだろう?」
  • 「その反対のストーリーも、もしかしたら成り立つだろうか?」
  • 「親しい友人が同じ状況だったら、私は何と声をかけるだろう?」
  • 「私はいま何を感じている?」
  • 「この状況は、私が大切にしている価値をどう教えてくれている?」
  • 「いまより1%だけ軽くなる思考は何だろう?」

関連投稿:自分への質問|毎日を振り返るための一覧

  1. マインドフルな観察

判断も分析も不要です。
ただ、「いま自分の内側で何が起きているのか」を感じ取る練習です。

やり方:
1日3回、スマホにリマインダーを設定します。
アラームが鳴ったら 60秒だけ停止

  • 深呼吸を1回
  • 「いま何を考えている?」
  • 「いま何を感じている?」

これだけで、(C)と(T)の間に小さなスペースが生まれ、反応を選べるようになります。

  1. コミットメントデバイス

セルフコーチングは「行動して初めて意味がある」ものです。
意図を行動につなげるための仕組みをつくりましょう。

やり方:
たとえば
「10分だけジャーナリングする」
と決めたら、それをスケジュール帳に書き込む。

「自分の成長のための時間を確保する」という行為そのものが、自分に対して「私はあなたを大切にしている」というメッセージになります。

関連投稿:自分探しアクティビティ集|新たな「自分」を発見!

セルフコーチング ツールキット

セルフコーチングにまつわる名言

もっと多くの名言はこちらでご覧いただけます

あなたの最高の教師は、あなた自身である。私の助言は、すべてを問い直すことだ。答えが見つかったと思ったら、その答えさえも再び問い直しなさい。

ルイス・ラモー

 

私たちは「考える心」と「感じる心」という、二つの心を持っている。

ダニエル・ゴールマン

 

正しい問いを立てることは、問題の半分がすでに解決されたようなものだ。

カール・ユング

 

外を見る者は夢を見る。内を見る者は目覚める。

カール・ユング

 

無意識を意識化しない限り、それはあなたの人生を操り続け、あなたはそれを運命と呼ぶだろう。

カール・ユング

まとめ

セルフコーチングは、決して一度きりのイベントではありません。
「自分を直すためのツール」でもありません。

その本質は、ときどき立ち止まり、再び自分へと戻ってくるという、人生を通した練習にあります。

価値観に戻る。
内なる声に戻る。
そして、どんな状況であっても、自分を思いやる場所へ戻ってくる

この「戻る」という行為が、少しずつ本来の自分へと近づけます。

時間はかかるかもしれません。
しかし、誠実に、粘り強く続けていけば、ある日ふと、自分の内側に「しっかりとした声」があることに気づく瞬間が来ます。

その声に耳を澄ませながら生きるとき、あなたの人生は、より豊かに、より満たされたものへと変わっていくはずです。

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